2020年度にITコーディネータの資格を取得しました。試験の感想としては時間が足りなかったにつきます。素早い判断が必要になるので知識だけでなく、経験も必要な試験だと感じました。
資格を取得してから変わったところは、経営陣の考えていることが理解できるようになったところでしょうか。私は平のサラリーマンですが、定期的に会社で方針説明があります。ITコーディネータは、会社の方針を作成するところも役割の範疇になっているので、その作成のプロセスも学ぶことができます。これが理解できるだけでも仕事の取り組み方が変わるので、とても勉強になる資格だと思います。
ITコーディネータとは
そもそもITコーディネータという資格をご存知でしょうか?
すでに取得している方がご覧になっているかもしれませんが、このブログをご覧になっているということは、“どこかで聞いたことがある“、“興味がある“、“資格を取得したい”など、なんとなくは知っているけど具体的にどんなことができるのか?と感じている方だと思います。
概要は以下の通りです。
- 2001年に通商産業省による国家プロジェクトの一環として設けられ、現在は経済産業省の推進資格となっている
- 活動形態としては独立業、ユーザー企業、政府・自治体のCIO補佐官など多様な領域で、約6,500名の資格保有者が全国各地で活動している
- 経営とITの橋渡し役として、ITと企業経営両方の知識を持ち経営者の経営戦略を実現するIT化支援サービスを行う専門家である
経済産業省の推進資格
2001年に通商産業省による国家プロジェクトの一環として ITコーディネータ資格制度が設けられました。推進機構として特定非営利活動法人ITコーディネータ協会が運営している民間資格となります。現在は経済産業省の推進資格となっています。
また経済産業省から公表されている ITスキル標準(ITSS)をベースとした特定非営利活動法人スキル標準ユーザー協会が作成している 「ITSS キャリアフレームワークと認定試験・資格の関係」において ITコーディネータは「レベル4」と定義づけられています。
「ITSS キャリアフレームワークと認定試験・資格の関係」における「レベル4」は、ITコーディネータ以外に下記のような認定試験・資格が定義されています。
- ORACLE MASTER Platinum Oracle Database
- 情報処理技術者試験プロジェクトマネージャ試験
- 情報処理安全確保支援士試験 など
2030年には約79万人のIT人材が不足すると言われています。その人材を補う上でもITのスペシャリストとして、ITコーディネータは今後も期待される資格といえると思います。IT人材の不足問題と合わせて昨今では企業内ではIT人材の質の問題も浮上しています。ITコーディネータは経営とITの双方の領域に長けた人材となるため、IT人材としての質も補うことが可能です。
約6,500名の資格保有者が全国各地で活動
ITコーディネータは製造業、小売業、サービス業をはじめ自治体、病院、学校、農業法人など多様な業種で数多くの実績、成果をあげてきています。活動形態も独立業として、ユーザ企業・ベンダ企業内人材として、また政府、自治体のCIO補佐官など、多様な職域で活躍しています。
私のように ITコーディネータのみを取得している方や、公認会計士、中小企業診断士、PMPなどと合わせて取得している方など様々です。経営者の方が ITコーディネータを取得し、企業の経営戦略のIT化を自ら実践している方もいます。また行政のIT化施策や補助金の申請の前提条件として ITコーディネータが必要な場合があるため、多くの場で活躍するチャンスがあります。
ITコーディネータは業務独占資格ではありません。しかしながら上記のようにITコーディネータの資格取得者の先人の活躍のおかげで、行政のIT化施策の前提条件に組み込まれるなど、資格を持っていない方よりは有利な立場で活躍することが可能です。
企業内においては、昨今推進されているDX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進役であったり、経営課題の理解が深くなるので営業などの活動の場でも活躍することが可能となっています。将来的には、企業におけるIT戦略担当やITのわかる経営幹部となることも期待できます。
経営とITの橋渡し役
ITコーディネータは「IT経営推進プロセスガイドライン(Ver3.1)」(略称:PGL)に基づいて活動を行います。IT化やDX導入と聞くとIT製品に置き換えるなどの技術的な面がクローズアップされますが、ITコーディネータは経営戦略の作成からIT戦略の作成、実行、保守、結果の分析など、幅広く支援を行うためのプロセスが体系としてまとめられています。
ITコーディネータは経営の視点で業務改善を行うIT担当者やITを活用するCIOのようなイメージが近いかも知れません。
つまり経営もITも理解できるからこそ、経営とITを結びつけることができる橋渡し役として活動することがメインの仕事になると思います。経営者には経営の課題をITで解決する方法を分かりやすく提案や説明を行い、実行するときにはメンバーに経営の観点を分かりやすく説明しながらITの導入を進め、活用方法を支援していきます。個人的には経営者も運用担当者もそれぞれの役割のもと仕事をしているので、自分とは違う役割を理解しながらコミュニケーションを取るのは難しいことだと思っています。が、この違いを埋めることができるのはお互いの役割を理解できる人だけだと考えられるため、ちょうどITコーディネータがその間を埋める役割を担うことになると考えています。
資格取得までの道のり
ITコーディネータになる為には以下のプロセスが必要になります。
年3回開催される試験に合格する必要があります。
集合研修とレポート課題に取り組む研修プログラムに参加する必要があります。
ITコーディネータ協会からの承認を「資格の認定」としています。
では、一つずつ具体的に見ていきましょう。
ITC試験に合格する
まずはITコーディネータ試験を受験し、合格する必要があります。
- 試験概要
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- 試験方式:CVT方式 ※パソコンで回答をポチポチ選ぶやり方
- 会場:約300ヶ所
- 開催期間:年間3回(春、秋、冬)、各回の期間は約1ヶ月間
- 試験日程:2021年度は以下の通り
- 【第45回】2021年度第1期
- 予約期間:2021/5/12(水) 〜 2021/6/25(金)
- 実施期間:2021/5/25(火) 〜 2021/6/28(月)
- 【第46回】2021年度第2期
- 予約期間:2021/9/1(水) 〜 2021/10/15(金)
- 実施期間:2021/9/16(木) 〜 2021/10/18(月)
- 【第47回】2021年度第3期
- 予約期間:2022/1/7(金) 〜 2022/2/18(金)
- 実施期間:2022/1/22(木) 〜 2022/2/21(月)
- 【第45回】2021年度第1期
- 試験応募要項
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受験資格 制限なし 試験形式 多肢選択問題 問題数 100問(必須60問・選択40問) 必須問題(60問) PGL全体の領域から出題される基本問題(40問)
PGLのIT経営共通領域から出題の応用問題(20問)選択問題(40問) 経営系問題(40問):経営戦略・業務改革・IT戦略
情報系問題(40問):IT戦略・IT利活用
※選択は申込時に「経営系」か「情報系」を選択試験時間 120分 受験料 19,800円(税込) ※専門スキル特別認定制度を利用することにより、対象の資格を保有している場合はITコーディネータ試験の一部が免除できる場合があります
冒頭で記載した時間が足りなかった件がここになります。見直しを考慮すると1問あたり約1分で回答して行く必要があります。ただし1問1問の背景の情報の記載が少ないので、戦略の作成やプロジェクトの推進などで発生する課題をITコーディネータ協会が発行する「IT経営推進プロセスガイドライン(Ver3.1)」(略称:PGL)をもとに少ない情報で判断していく必要があるので、知識だけでなくある程度の経験がないと短い時間での判断は難しい内容となっています。
各回では約200名から300名が受験し、合格率は約60%から70%となっています。割と高い合格率となっていますが、受験料が高めなので、私もそうですが、かなり合格できる確信が高い状態で受験する方が多いものと思われます。
ケース研修を受講する
試験の出題範囲にもなっている「IT経営推進プロセスガイドライン(Ver3.1)」(略称:PGL)は、あらゆる組織に適応可能なベストプラクティスであるIT経営プロセスとなっており、ケース研修ではPGLを活用した活動を仮想企業を題材に疑似体験することによって、IT経営の推進方法、およびITコーディネータの業務や使命を修得します。
ケース研修はオンライン開催を含む集合研修が基本となっています。経験豊富なインストラクタと様々な経歴・経験を持つ受講生が一堂に会して、講義、モデルケース企業の課題解決グループワーク、プレゼンテーションなどを通してITコーディネータのプロフェッショナルとしての振る舞いを実践的に学び、気づきを得ることができます。
つまりPGLを体験し、自身の経験に落とし込むことで、自信を持ってITコーディネータとしてすぐに活動することが可能となります。
ケース研修のカリキュラムの概要は以下の通りです。
実施形態 | 週末(土日 1+2+2+1)または平日(月火または水木 1+2+2+1) ※オンライン開催コースあり |
目標 | ケース研修を通じてIT経営推進プロセス(IT経営推進プロセスガイドライン)を理解する |
研修手法 | ・講義 ・グループ討議、ロールプレイを通じた疑似体験 ・IT経営推進プロセスガイドラインの基本の理解を中心にするが、自ら考える場面をおりまぜる ・グループワークを通じ、ファシリテーション能力を向上をはかる ・受講期間中、インストラクターによる今後のアドバイスを行う |
対象プロセス | ・変革認識プロセス ・変革マネジメントプロセス ・持続的成長認識プロセス ・経営戦略プロセス ・業務改革プロセス ・IT戦略プロセス ・IT利活用プロセス |
ケース | 同一モデル企業での一気通貫の学習(受講者が理解しやすい一般的な業界) |
インストラクタ | 実務実践型インストラクター |
費用 | 220,000円(税込) |
6日間の研修となりますが、参加してみるとPGLの奥深さが実感できるのと、たくさんの要素が詰め込まれているので、もう少し期間を伸ばしても良いのでは?と感じました。足りないと感じたら、資格取得後でもケース研修以外に様々な研修があり、ITコーディネータ資格の取得後も学習する環境が整っているので、追加で理解を深める為の研鑽も可能となっています。
ITC資格の認定を受ける
ITコーディネータ試験に合格し、ケース研修の受講が完了すると、晴れてITコーディネータの認定の申請が可能になります。なので、実はITコーディネータ試験とケース研修はどちらを先にトライするかは本人の自由となります。ある程度のIT関連または経営関連の経験がある方は紹介したITコーディネータ試験 >>> ケース研修の順番でも大丈夫と思います。どちらも経験が浅い方は、ケース研修 >>> ITコーディネータ試験の順番が良いかと思います。ただし試験合格または受講完了した日から4年以内にもう片方の試験合格または受講完了が条件になるので、注意が必要です。
申請から認定までの流れは以下の通りです。
1 | メンバーページにログイン |
2 | 認定申請登録 |
3 | 認定登録料お支払(22,000円(税込)) |
4 | ITコーディネータ協会側で認定登録料のお支払いが確認できたら、資格認定が確定 |
5 | 認定確定後、認定結果通知メールが配信される。 メンバーページにて「認定証ダウンロード」が可能になる。 |
6 | 認定証(盾)の発送(認定確定月の翌月上旬頃) |
これで晴れて、ITコーディネータと名乗ることができます。認定証(盾)はA4サイズの大きなものが届くのかと思いましたが、小さ目のものが届いたので、机の上に飾っています。なんでもデジタルな世の中になりつつありますが、認定証(盾)の様に現物が目の前にあると実感があって良いなと思いました。
試験対策
私がITコーディネータ試験を受けたときの対策を紹介させていただきます。
- PGLを読み込む
- サンプル問題と繰り返し解く
- 過去に参加したプロジェクト思い出す
PGLを読み込む
まずは出題範囲である「IT経営推進プロセスガイドライン(Ver3.1)」(略称:PGL)を入手しましょう。特定非営利活動法人ITコーディネータ協会のホームページから入手することが可能です。
このPGLには経営とITを橋渡しするプロセスがまとめられています。どの様に経営戦略が作成され、それをIT戦略に落とし込み、どのように効果を出してい行くかがガイドラインとしてまとめられています。普段行っている業務が整理されているので、自身の業務が会社でどういった役割となっているか?も知ることができます。合わせてITコーディネータがどのようにそれらに関わっていくのか?といった指針が記載されています。
私は通勤時間などを使って、これを何度も読み返していました。知らない単語も出てくるので Google で検索し、単語の中身を理解することで、自身の知識として蓄積するように努めていました。私は見て覚えるタイプなので繰り返し読み返しましたが、人によっては書いて覚えるほうが良い方もいるので、そのあたりは自身の覚えやすい方法で良いと思います。
試験ではこのガイドラインに沿った考え方による回答が必要になるので、「自分ならこうする」よりも「ガイドラインに沿って解決」することを意識しながら覚えると良いかと思います。
サンプル問題と繰り返し解く
「IT経営推進プロセスガイドライン(Ver3.1)」(略称:PGL)を読み込んだら次はサンプル問題を入手しましょう。
過去問はありません。その為、サンプル問題は特定非営利活動法人ITコーディネータ協会のホームページからも入手可能ですが、私は「ITコーディネータ試験想定問題集 PGL3.1対応」を購入し、これをひたすら解いていきました。試験で同じ問題は出ませんでしが、試験での解き方や、ちょうど100問あるので試験時の時間配分の感覚を掴むことができるかと思います。その他にも、「ITC試験合格を目指す方のための「ITコーディネータ資格試験対策本」などが出版されている様なので、100問だけでは足りないという方は追加で解いてみるのもありだと思います。試験を受けてみての感想は、とにかく試験の時間が短いので、ひたすら解いて慣れることが重要になってくると思います。
サンプル問題だけでは不安だと思われる方は、試験対策のセミナーもあります。特定非営利活動法人ITコーディネータ協会のホームページで紹介されていますが、全国のITコーディネータに関する団体が試験対策に関する支援を行っています。PGLを細かく解説したり、模擬試験も行っているので、自己学習よりも効率的に試験対策ができると思いますので、無料ガイダンスや説明会だけでも参加してみるのも良いかもしれません。
過去に参加したプロジェクト思い出す
普通の試験対策としては先にあげた2点ですが、ITコーディネータ試験では知識だけでなくある程度の経験が必要な試験だと感じています。どんな仕事でも、戦略があり、計画があり、プロジェクトの実行が業界で言葉が違えど同じようなプロセスを踏むと思います。それを共通言語として、「IT経営推進プロセスガイドライン(Ver3.1)」(略称:PGL)で整理されています。試験は冒頭にも記載した通り、1問1分ぐらいで解いていく必要があります。つまり経験として身になっているほど、判断が早く行えるので、自ずと回答も早くなると考えています。
それぞれの会社でルールがあるとは思いますが、まずは自分がどのようなプロジェクトに参加して、そのプロジェクトで発生した課題をどの様に解決してきたとか、どのような方針で進めてきたのかを思い出すことも試験対策につながると思います。
自身のスキルや経験の棚卸しにもなると思いますので、試験対策として一度、過去に参加したプロジェクトを思い出してみることをお勧めします。
ITCの認定が終わっても勉強は続く
ITコーディネータ資格の認定で終わりではありません。資格は永久ではなく資格を維持するために年度更新が必要になります。IT分野の技術の進歩は早く、ITコーディネータも常に新しい技術を取り入れていく必要があります。ITコーディネータがIT分野の第一線で活躍し、IT経営のプロフェショナルであることを証明するために、その一年で蓄えた知識や経験をポイントとしてカウントし、資格の認定を更新する方式を取っています。資格を維持するためのイメージは以下の通りです。
ポイントは以下の2つになります。
- フォローアップ研修を3年以内に受講すること
- 年間10ポイントを取得すること
フォローアップ研修ではITコーディネータとして活動するために必要な知識を補うことが可能になります。支援先の企業とのコミュニケーションや打ち合わせのファシリテーションの方法など、複数の研修から選択して参加します。
またフォローアップ研修以外に年間10ポイントの更新ポイントを取得する必要があります。ポイントはフォローアップ研修を含めた様々な研修でポイントを取得することが可能です。1つの研修あたり1ポイントから3ポイントぐらいを取得できます。またITコーディネータ協会が認定した雑誌などの刊行物も少ないですがポイントを取得することができます。1番取得しやすいのはITコーディネータとしての活動になります。ITコーディネータとして企業の支援や講演会などを活動していれば自然と10ポイントは貯まるので研修の受講や刊行物の購入は不要になります。最新の知識も必要ですが、現場での経験に重点が置かれているということですね。
まとめ
私は自身がITのプロフェショナルであることを証明する手段として、ITコーディネータを取得しました。ITコーディネータが認定されると特定非営利活動法人ITコーディネータ協会のホームページに名前が記載されます。年度更新を忘れると認定が失効し、名前が消えてしまいます。ここに記載されている方はIT経営の分野の第一線で頑張っている方々になるので、IT経営で課題がある企業の方は一度どんな方が登録されているかを見てみるのをお勧めします。どの人が会社の課題を解決してくれそうなのか迷った場合はITコーディネータ協会に相談するのありです。
ということで、ITコーディネータについてまとめてみましたが、いかがでしたでしょうか? ITコーディネータになるには以下のSTEPが必要です。
年3回開催される試験に合格する必要があります。
集合研修とレポート課題に取り組む研修プログラムに参加する必要があります。
ITコーディネータ協会からの承認を「資格の認定」としています。
まだ取得したばかりなので、私のITコーディネータとしての活動はこれからになります。IT関連で行くとヘルプデスクから始まり、端末管理、オンプレやクラウドなどインフラ構築、VDI や顔認証や Amazon Connect などのシステム構築、業務改善、プロジェクトマネージャ、IT戦略作成などを経験してきました。今はそこに経営の視点が追加され、今までは自分のタメになることを中心に取り組んできましたが、今後は世の中の人がITで暮らしが豊かになるように活用していきたいと考えています。
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